●気持ちをわかってくれない?かんしゃく持ち?パートナーとの問題を読み解く参考書籍3冊

前前前回の本のご紹介では“危険人格”のチェックリストと対処法にまつわる内容でした。

「確かに悩むことはあるけど、こんなに身の危険を感じるほどでもないかな」

「正直、日々、別居を考えるほどだけど…実は原因が何なのかよく分からない」

など、解決につながりそうな本を3冊ご紹介します。

 

【例えばの話:その1】「なんでこの人、仕事が続かないんだろう?」が“性格の問題”ではないかもしれないということ。

「給料袋をどこかに無くしてしまう」

「判然としない理由で仕事を休みたがる」

「人間関係でトラブルを起こしがち…」

「計画を立てたり将来の話をしようとするとどうも近視眼的…?」

無戸籍児・無戸籍者の問題の内容とつながっているのですが、上記にあげたパートナーに改善してほしい行動の数々…。無戸籍者関連の参考書籍の著者からも指摘のある、

“当事者の抱える障害や知能の問題”

が原因であって、決して本人が“たるんでいる”とか“性格がだらしない”わけじゃないかもしれないのです。

これを読み解くヒントが

“境界知能” と “発達障害”

です。

 

まず、“境界知能”とはなにか?

人の知能はIQ100~110が平均的といわれ、支援学級に入るのはIQ70以下とされています。ただ、とある時期までは支援学級に入るべき知能障害はIQ85までされていたことがあり、日常生活においてもIQ90を下回ると様々な場面で不自由を感じるようになる。…と、宮口幸治著『ケーキの切れない非行少年たち』の中で述べられています。

そして“発達障害”とはなにか?

発達障害はグラデーションになっており、IQ60以下は自閉症、IQに問題はない場合では…特定の学習作業が苦手(たとえば文字を読むのに時間がかかりすぎて苦手であるなど)は学習障害(ASD)と言われ、高IQにも拘らず場の空気を読むのが苦手であるとアスペルガー、その他ADHDや広汎性発達障害などを含めたすべてを“自閉症スペクトラム=発達障害”とよばれています。そして発達障害を持つ人は、様々な種類の発達障害や独自の生きづらさや特性を併せ持っているといわれます。

つまり、先にあげた

「給料袋をどこかに無くしてしまう」のはADHDの多動や不注意のせいかもしれないし、

「判然としない理由で仕事を休みたがる」のは自分のことに自分で気づくのが苦手な発達障害全般にあてはまる特性のため、疲労や心理的苦痛があっても自覚が薄かったり、自分でうまく説明できないからかもしれない、

「人間関係でトラブルを起こしがち…」なのは境界知能が理由でその時々の状況を歪んで受け止めているのが原因で正しく理解できていないからかもしれないし、また、発達障害やHSP(発達障害の人によくみられる感覚過敏)で人よりも高い感受性で苦痛を感じやすかったり、広汎性発達障害やADHDやアスペルガーのように対人関係において相手や周囲の心理を察知するのが苦手で誤解されがちなのかもしれないし、

「計画を立てたり将来の話をしようとするとどうも近視眼的…?」なのも境界知能による未来予測の弱さや、発達障害によるなんらかの脳の得手不得手が関係しているものかもしれない…

と読み解けます。

【例えばの話:その2】どんなに妻が忙しくても、こまかく夫に指示しないと夫が子どもの面倒をみてくれない。または、妻が在宅時間が長いはずなのに一緒にいて困るほど片付けが出来ない。なども障害が関わっているのかもしれない、ということ。

これらは発達障害を持たれる方がよくあげられる困難さにもあてはまります。

これらも“性格の問題”ではなく“脳の特性の問題”なので、工夫と仕組みで改善できる可能性があるということです。

特にお子さんを抱えながらの日常での不和は時として夫婦関係を追い詰め、子どもへの影響も気になるところ。

そんな場合の解決策を発達障害の特性ごとに解説してあるのが

宮尾益知/監修『お父さんが発達障害とわかったら読む本』です。

そして、“境界知能”と“発達障害”を併せた様々な要支援者に対して有効な支援策と、支援する側の心得を述べられているのが、先の『ケーキの切れない非行少年たち』の続編

宮口幸治/著 『どうしても頑張れない人たち』です。

『ケーキの切れない非行少年たち』と『どうしても頑張れない人たち』はAudibule版もあります。

忙しい中でも家事などの作業をしながら聞けるのでおすすめです。

また、これらの書籍をパートナーに読ませたいけれど読書が苦手で文字を追うのが大変そうな場合にもご活用いただけるかもしれません。

 

ここまで、“境界知能”や“発達障害”が家庭生活の困難の原因になっている場合を想定して3冊の書籍をおすすめしました。

ご自身には当てはまらない場合もあるかと思います。ただ、発達障害の発症者数が増えているともいわれている昨今、職場やご近所付き合いの中でのトラブル解決のための他者理解の一助としてお役立ていただけるかと思います。また、“境界知能”や“発達障害”への義務教育の現場での問題は、日本国内の雇用や労働の問題にも通ずる内容です。無戸籍者問題もそうですが、当事者やその近親者のみでは解決しがたい問題です。何故なら、ご本人の自己覚知が発達していないことが様々なトラブルの一因にあることは先に述べた通りです。教育や雇用の現場での指お父さん。がの取り組みが必要です。是非とも、先の3冊をご一読いただき、ともに向き合っていただけますと幸いです。

 

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